9月議会一般質問 大和の自然を生かしたまちづくり
- 新総合計画におけるやまと軸上の森に関する考え方について
今まで総合計画の中でやまと軸にある2つの森については新たなまちづくりの中で市街地の形成と緑の保全の調和をはかっていきます。としていました。
新大和市総合計画の中で緑の拠点として位置付けている6つの森のうちやまと軸上にある2つの森(中央林間自然の森、中央の森)の中で新たなまちづくり(内山地区、中央森林地区)と調和のとれた緑の活用を図って行きます。となっています。「保全」という文言がなくなっていますがどのような意味になるのでしょうか?保全はしていかないのでしょうか?大きく変える意味はあるのでしょうか?
新総合計画におけるやまと軸上の森に関する考え方について市長のお考えをお聞かせください。
答弁 総合計画は、中長期的なまちづくりの方向性を示すとともに、市民や地域、議会、行政で共有するものであり、大和市の特徴や今後の社会情勢の変化などを考慮したうえで、将来都市像をはじめ、土地利用や財政運営の方向、将来都市像の実現に向けた施策などを掲げている。
新総合計画の素案を策定するにあたり、大和市のまちの構造に目を向けると、市の中央を南北に走る鉄道に沿って都市機能が集積するやまと軸と、市の東西を流れる境川と引地川に沿って自然が広がる2つのふるさと軸の3つの軸を骨格とするとともに、市街地の形成過程や歴史、環境面などから、北のまち、中央のまち、南のまちの3つのまちに分けられるという特徴を有している。
やまと軸上にある中央林間自然の森と中央の森の2つの森については、少子高齢化などの課題への対応や、例えば、内山地区の市街化、上瀬谷通施設跡地での国際園芸博覧会の開催などを踏まえた新たなまちづくりの動向を考慮しながら、調和のとれた緑の保全や整備を進めていけるよう、活用を図るという方向性を素案として示したところである。
緑の保全と生物多様性について
私たちの社会全体を支える生態系サービスは過去50年間で劣化傾向にあると指摘されています。私たちが持続的に生態系サービスを得ていくためには、地球規模で生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」に向けた行動が急務となっています。
2021年6月に英国で開催されたG7サミットにおいて、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させるという目標達成に向け、G7各国が自国の少なくとも同じ割合を保全・保護することについて約束しています。国は、2023年3月31日 「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定しました。
神奈川県では「かながわ生物多様性計画」に基づき、「地域の特性に応じた生物多様性の保全」と「生物多様性の理解と保全行動の促進」を目標として生物多様性の保全と取り組みを推進しています。神奈川県内で生物多様性地域戦略策定をしている市町村は川崎市、横浜市、相模原市、厚木市、秦野市、藤沢市、茅ヶ崎市、大磯町です。
大和市では「6つの森を守るガイドライン」の中で都市活動における環境負荷を小さくする努力を続けるとともに市内に残る大規模な6つの森については緑の拠点として、今後も失われることがないよう保全を図っていくことを定めています。6つの森とは中央林間自然の森、中央の森、泉の森〜ふれあいの森、深見歴史の森、上和田野鳥の森〜谷戸頭・谷戸緑地、久田の森です。
中央林間自然の森は、以前より、中央林間自然の森と相模原市の緑地を含めた一帯は「つるま自然の森」と呼ばれ、市民に親しまれてきました。多くの人に愛される都市型の森として明るい森づくりを目指し、森の樹木更新を推進していきます。以前から多くの野鳥が観察できる森であり、これらの野鳥や昆虫をはじめとする生態系の維持・保全を図ります。ボランティアによる森の手入れなど緑地保全・育成ワークショップや子どもたちをはじめ市民が森に親しむ活動の開催の支援を行っていきます。
泉の森は~緑の文化の創造と交流の森づくり~として本市の最大の緑地であり、生物の保全・育成活動、環境学習、憩いやレクリーション、健康づくり等の多様な活動の受け皿とし、こうした都市生活の中での自然とのふれあいを通じた市民の緑の文化の創造と交流を促す場となる森として保全します。
また泉の森の湧水を水源とする引地川は、日本で初めて多自然型護岸という従来のコンクリートブロックで固めるだけの護岸工事とは異なり、治水上の安全を確保しつつ植物の良好な育成環境に配慮した、水と緑、豊かな護岸を作る工法でつくられたためこの環境を維持しています。ここでは毎年、市民がボランティアで柳を剪定し、補植を実施するとともに、草刈りを実施するなどして自然護岸を保全しています。
しかしながら、ここでも長い年月による浸食がみられます。イベントでは当初、参加者が川に入る予定の場所がかなり水の流れにより浸食され、足元が悪くなっていたため、急遽別の場所から入ってもらいました。
今後気候変動による豪雨等大量の浸食が進めば自然護岸の崩落を招く心配があります。異常気象で降雨量が想像できないくらい増えた場合、自然護岸を保つことができるのか心配されます。また「じゃかご」の鉄筋が切れて、中の石がかなり川の中にちらばっているところもあります。改修から30年を超えており多くの生物を育んできていた護岸のメンテナンスが必要な時期になってきています。
多様な生物を育み守っていくためにも、洪水流量を考慮した河岸侵食特性の検討を行い、計画的に保全していくことが必要と考えます。
そこで質問します。
質問1. 神奈川県内で生物多様性地域戦略を策定しているところは8市町村あります。里山を大切にして様々な活動をしているこの大和市でも市民参加により「大和市生物多様性地域戦略」を策定してはどうか?
答弁 生物多様性地域戦略については、神奈川県が県内全域を対象とした「かながわ生物多様性
計画2024-2030」を策定しており、大和市はこの計画に基づき、県と連携して緑地の保全や特定外来生物の防除対策などに取り組んでいる。
さらに、「大和市環境基本計画」や「大和市緑の基本計画」において生物多様性の施策の方向性を示しているので、こうした施策を実施していくことにより、生物多様性地域戦略と同様の目的を実現できるものと考えている。
質問2. 緑の基本計画に書かれている樹林地・農地の一体的な保全・育成について述べられています。生物多様性を担保するためにも、この樹林と農地の保全を一体的に考えていく計画をつくるべきではないかと考えます。
そこで質問します。できる範囲で用地取得に取り組んでもらい大規模緑地の生物多様性を守るべきと考えるが市の考えをお聞かせください。
答弁 大和市内には泉の森や中央林間自然の森など8つの大規模緑地があり、多くの生き物が生息している。これらの緑地を維持することは、生物多様性を守ることにもつながるものと捉えている。現在は、土地所有者との賃貸借契約などにより緑地保全に取り組んでいるが、今後の用地取得については慎重に判断していく。
質問3 多自然型護岸方法で作ったふれあい広場の護岸は全国的にも評価されています。生物多様性を育んできたふれあいの森の護岸も改修から30年を超えておりメンテナンスが必要な時期と考えますが、護岸の補修について市はどのようにお考えでしょうか?
答弁 引地川水系はふるさと軸として環境資源を活かし、泉の森、ふれあいの森、遊びの森ゆとりの森の4つの空間づくりを行い、緑のネットワーク構築を目指す「引地川水系自然公園基本計画」を策定している。
ふれあいの森は引地川水系自然公園の最も中心的な部分で、水と緑と花を最大限に表現しつつ、うるおい、やすらぎ等が感じられる空間を目指すとしている。
森の中の多自然型護岸は整備され30年以上経ち、護岸の一部が劣化している。令和2年度の河川施設の点検調査委託では、当該箇所の機能に支障が生じていないため、今後護岸の状況を注視するとともに、護岸の改修等を行う際には、子どもたちが川とふれあうことができる空間づくりを併せて検討する。
要望 総合計画案において、やまと軸上にある中央林間自然の森と中央の森の2つの森については、新たなまちづくりの動向を考慮しながら、調和のとれた緑の保全や整備を進めていけるよう、活用を図るという方向性を素案として示したところである。とのお答えでした。
「緑の保全」という言葉がなくなり、「調和のとれた緑の活用を図っていく」ではどうとでも取れるので市民はとても不安に思っています。総合計画が元となりこれから、緑の基本計画や都市計画などが作成されていくわけですから、この計画の文言はとても重要となります「調和のとれた緑の保全」という言葉を総合計画に入れていただくよう要望します。
大和市内には8つの大規模緑地があり、多くの生き物が生息しています。つるま自然の森は野鳥や昆虫をはじめとする生態系の維持・保全を図っています。ボランティア団体が行っているセミの調査ではヒグラシというセミが多く生息しています。ヒグラシは自然道にしかいなくヒグラシの数が他の森に比べて断トツに多いのは自然が豊かである証拠です。
「つるま自然の森」は月2回のボランティアによる森の手入れなど緑地保全・育成ワークショップや子どもたちをはじめ市民が森に親しむ活動を行っています。子どもが色々な体験をできる場であり、市民の憩いの場になっています。しかし令和4年度保全を図っている緑地面積は86.4haから85.7haに減っています。
人間の都合で動植物の住む環境を変えてしまっていいのでしょうか?動植物を守ることは子どもたちの健全な発育にとって重要だと考えます。この森を含めた周りの畑が保たれていることにより、野鳥や昆虫の生態系も保たれているためこの環境を守っていかなければなりません。現在は、土地所有者との賃貸借契約などにより緑地保全に取り組んでいるが、今後の用地取得については慎重に判断していく。とのとのお答えでした。
2008年のつるま自然の森に関する河崎民子元議員の一般質問で「相模原市のように地権者の申し出による買取だけではなく、地権者のご理解をいただき積極的に買い取って参りたいと考えております」と大木前市長はお答えになっていました。
2018年、緑の保全に関する山崎さゆき元議員の一般質問では「今後も中央林間自然の森や泉の森など、貴重な財産である保全緑地を残していくために、地権者の意向を継続的に確認しながら、用地の買取を行うことにより積極的に保存を図ってまいります」と前大木市長はお答えになっています。今後小谷田市長が緑の保全についてどのようなお考えなのか、どういうまちづくりをしていくのか市民はとても注目しています。
用地取得には慎重に判断してとのお答えでしたが、用地取得に向けて積極的に行わなければこの森の自然は保たれないということをわかっていただきたいと思います。また今後計画を変更していく際にはそこで活動しているボランティア団体に意見を聞いて計画に反映していっていただくことを強く要望致します。