院内集会 介護保険を立て直す

 「1月23日、衆議院第二議員会館の第1会議室で院内集会が開かれ厚生労働省に「介護の社会化と在宅介護を後退させないための要望書」を提出しました。

超高齢社会を支える重要な制度として介護保険を立て直す4つの提案を訴えました。

1.訪問介護員の人材確保は待ったなし
厚生労働省によると、第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等から推計した介護職員の必要数は、2026年度に約240万人(2022年度対比+約25万人)、2040年度には約272万人(+約57万人)となっています。ただちに、国をあげて人材確保策をより強化・推進しなければ、世界に誇る日本の介護保険制度は崩壊します。今後の人材確保のために、訪問介護員の社会的役割と意義にふさわしい基本報酬で待遇してください。さらに、その価値を発言するため、できる限りのイメージアップ戦略を推し進め国民に向けて効果的に発信してください。

2.基本報酬を上げない限り、介護に未来はない
低賃金の推移を見ると、2002年度には、全国平均623円であったのが、2024年度には1,055円で、1.6倍に伸びています。これに対し、介護保険基本報酬は、3年毎の見直しを経て、2024年度改定までに合計で1.96%の上乗せでしかありません。全産業の平均給与額に比べ、訪問介護員の給与額は6.8万円ほど少ないと言われています。処遇改善加算が導入されて久しいですが、この差が「解消」されたとはいえない状況です。
 また条件をクリアできている大手事業所と比べ、上位加算の取得が難しい事業所では、最低賃金の上昇と併せ、経営は大変厳しく、2024年の「介護事業者(老人福祉・介護事業)」の倒産は172件で、介護保険法が施行された2000年以降最多件数を更新したとのことです。

3.要介護1・2の総合事業移行に反対!
介護予防・日常生活支援総合事業は、要支援1・2の人に向け、住民を含む多様な主体によって、市町村が地域の実情に応じたサービス提供を行うことを目的に、2015年から開始されました。9年が経過するも事業目的を達成できていない市町村が多く自治体間格差が生じています。
 訪間型生活援助サービス(サービスA)は、多くの自治体が有資格の訪問サービスに比較して、報酬単価を低く設定しています。そのため、担い手は広がらず、実際のサービスについては有資格者が報酬を減らして従事している実態があります。また、サービスBについては、要支援者の中には、認知症、歩行等に支障があるといった人も多く、住民主体で担うことの難しさが当初から指摘されています。要介護1・2を総合事業に移行することは不可能です。受け皿もない、担い手もいない、介護が成り立たなくなることは明らかです。総合事業そのものを見直し、要支援者も含めた在宅サービスのあり方を再検討すべきです。

4. 利用者負担の引き上げに反対!
介護保険のサービス利用は、80代からが多く、85歳以上では50%を占める状況にあります。80歳以上の世帯の家計状況は、所得のすべてを年金のみに頼る世帯が多く、現在の物価高騰や光熱費等の値上がりにより暮らしは大きな影響を受けています。介護保険制度のスタート時には、「所得にかかわらず1割」とされた利用者負担割合については、所得に応じて2割または3割とする改定が行われました。ケアプラン有料化については、2024年度の介護保険制度の改定議論では見送られましたが、介護費用抑制を理由に実施に向けた議論が根強くあります。
 介護サービスは生活を支える経常的な支出です。利用者負担割合が原則2割となることで利用控えにつながり、その結果、重度化が進み、家族等の介護者の負担が増大し、介護離職の増加も懸念されます。経済産業省「2022年経済産業省企業活動基本調査速報」によれば、2030年には家族介護者833万人に対してその約4割(約318万人)がビジネスケアラーとなり、ビジネスケアラーの離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は約9兆円に上るとされています。また、ケアプラン有料化によりケアマネジメントの利用が抑制されることで、要介護者の状態変化の早期発見・早期対応が困難になり、社会的負担が増大する恐れがあります。
 保険制度にあって、介護保険料を払い続けていながらサービスが必要な時に、生活苦から使えないということにならないように、また誰でも介護認定を受け、安心して介護サービスが受けられるように、利用料の負担割合の引き上げ(拡大)やケアプランの有料化といった利用者負担の増加はすべきではありません。

 神奈川ネットからは青木県議会議員とネット青葉の若林智子さんがパネラーとして発表しました。高齢者が地域で安心して暮らしていけるよう、仲間とともに活動していきます。