街路樹の管理と整備について

街路樹の多彩な役割と意義

近年、台風や豪雨など深刻な自然災害が相次ぎ、街路樹が倒れて道路が通行止めになったり電線が破断したというニュースをよく耳にします。市民からの落葉の苦情もあると聞きます。果たして街路樹は都市づくりのお荷物なのでしょうか?

街路樹は街並みに統一感を与え、沿道景観に彩りや季節感、潤いや安らぎをもたらす効果が知られています。人の心拍数や目の動き、脳波を調べるとコンクリート構造物の近くでは緊張し、樹木の枝葉でそれが和らぐと示した実験結果があり、生理心理的なストレスが緩和されることがわかっています。道路に直射日光が当たると夏場の路面温度は50度を超えますが、街路樹の木陰では路面温度が約20度も低くなります。また雨水を地中に浸透させる機能もあります。都市では雨は道路や建物の表面を伝って排水溝に流れ込みますが、近年の集中豪雨では道路が冠水したり、建物が浸水したりと深刻な問題が起きています。街路樹が植っている樹幹帯や植え升の土壌には、雨が浸透して表面排水を減らす効果があり、都心洪水を緩和します。また気温が上がり乾燥すると土壌から水分が蒸発し、気化熱によって地表面の温度が下がってヒートアイランド現状を緩和します。CО2を吸収することで地球温暖化防止に役立ちます。
また火災時の熱吸収・低減による延焼防止、地震時の家屋倒壊防止の効果があり、阪神淡路大震災の際には火災から守る防火壁としての役割もありました。
このように街路樹は「景観」や「環境」「防災」の観点で重要な役割を担っていますが「交通安全」の面からも車と歩行者の分離、並木効果による運転者の視線誘導、ヘッドライトの防眩効果により交通安全性の向上に役立っています。

そこで大和市の街路樹に目を移します。南大和相模原線の南林間入り口から大和高校入口信号あたりの街路樹モミジバフウが強剪定されて街路樹が丸坊主になり電信柱のようになっています。資料7の写真をご覧ください。大和駅から引地台公園に行くまでの道、警察署がある通りでここは県道ですが緑がある通りです。皆さんはどちらの道を通りたいと思いますか?このように切られた街路樹を見ると潤いや安らぎを感じるどころか本当に悲しい気持ちになります。

街路樹に関する知見では第一人者と言われる藤井英二郎千葉大学名誉教授は、岩波ブックレット「街路樹は問いかける」の中で何故日本では「寂しい街路樹」の姿が一般化してしまったのか?街路樹は繰り返し強く切りつめられ、枝葉を広げることが許されない状況になっていると述べています。街路樹をよく見ると幹や太枝に瘤があってそこから細い枝が出たり幹元から枝が箒のように出ているものが大和市の街路樹でも見かけます。瘤は同じ箇所で剪定が繰り返されてきた証拠で、瘤からたくさんの細い枝が出ているのは上部の枝が強く選定されて枝葉が足らなくなり、急いで枝葉を補おうとうする木の反応だそうです。

街路樹が強剪定されるその原因は何か、、、「役所の姿勢」「落ち葉の苦情」「管理業者の価格競争」というふうに街路樹との関わり方によって様々な主張があります。確かなのは人間の都合によって日本の多くの街路樹が哀れな状況になっているということです。

現状を改善するには管理仕様書をもとにしながらも技術的判断ができる職員を配置する必要があります。専門的な知識を備えていれば、外観診断を必要に応じて精密診断を専門の樹木医に委託、という体制をとることができ、診断を対策判断・予算措置の検討も含めて合理的・柔軟なサイクルができます。そのようなことができるように仙台市などのように、すべての街路担当職員に対して研修会を毎月行ったり、見本剪定講習会を行っている自治体もあります。
街路樹の特性や寿命などを考慮して街路樹の管理、計画をしていくことが必要と考えます。

 町田市三輪緑山けやき通りは樹冠を大きく維持するために、剪定は必要最小限に留められています。樹冠が大きいので、車道は緑のトンネルのようになっています。また、街路と並行して緑地が設けられており、低木や高木が植栽されているので、一般的な街路に比べて緑の量が多く快適な街路空間が構成されているそうです。
東京都立川市の立川サンサンロードのけやき並木や杉並区の中杉通りけやき並木、町田市のけやき通りなど街路樹が美しい街として写真コンテストなどに出ています。つきみ野のけやき街路樹も地域住民のボランティアなど地域社会で主体的に身近な環境をつくり、手入れするためのコミュニティとして活動しているところもありますが、このけやき並木も強剪定されています。

アメリカではi-treeというソフトを活用して街路樹がもたらす生態系サービス(炭素固定蓄積・冷暖房費削減・大気汚染物除去など)の価値を算定・公開することで街路樹に対する市民の認識を深め、育成活動への参加を促しています。日本でもデジタル技術を用い、まず市民にわかりやすく情報提供することが求められます。川崎市ではi-treeを用い、市民に情報を提供しています。
街路樹は沿道の市民にとって最も身近な公共の緑です。街路樹に対する個別の意見、要望に対して沿道地域社会の視点を加えそれらを相対的に受け止めるうえでも重要な役割を果たしています。今後はしっかりとした植栽基盤整理、管理受託者の技術革新に加えて街路樹の役割や実態を理解していく人を増やしていかなければなりません。

そこで質問します。

質問1.今現在、季節感や潤い・安らぎを与えたり木陰を作って路面温度を下げると言ったような街路樹の役目や意義がないような状況になっています。大和市の街路樹について市長はどのような考えがあるのかお聞かせください。
街路樹につきましては、景観や環境、交通安全および防災の観点で、優れた効果があると認識しております。
一方で苦情もあるため、沿道の皆様のご意見等をお聞きしながら現場状況に敵した管理や更新が必要であると考えております。

質問2.街路樹が電信柱のようにまる坊主になってしまうのは苦情によるものなのか?年間どのくらいの苦情が寄せられるのか?どのような苦情があるのか?

枝葉による視界不良や車両事故など、様々な内容があり、例年200~300件に上ります。近年の傾向として、樹木の伐採や落葉前に剪定して欲しい等の意見があります。

質問3.現在の街路樹の剪定の仕方はどのようになっているのか?また剪定するのに今現在いくらかかっているのか?

質問6.なぜ強剪定する必要があるのか?
今後街路樹の管理の仕方を見直すべきではないか?樹種によって寿命や特性をみて管理計画を立てていくべきではないか?
(一括市長答弁)

街路樹の剪定や草刈等に係る費用は、令和4年度の決算額が6千万円、令和5年度の予算額が6千6百万円となります。
高木剪定の基本的な考え方は、樹形及び法令に定められた道路空間を確保し、2年から3年に一度、枝の切除等を実施しております。
管理方法等の見直しを行いながら適正な維持管理に努めてまいります。

質問4.大和駅のシリウスへ向かうプロムナードで真ん中に木を植えると来場者の多いシリウスへ向かう道も木陰になり、テーブルなど置いて休み場所も過ごしやすくなる。木陰によって20度近く温度が下がる効果もあるためプロムナードに木を植えてはどうでしょうか?
安全な歩行空間の確保と防犯性の向上を図るため、現在の道路形態に整備しました。
大和駅周辺の街づくりの中で、プロムナードの利活用に合わせて考えてまいります。

質問5.桜ヶ丘駅西口から続く桜ヶ丘境橋線の歩道のソメイヨシノは植えてから50年ほど経っているため今後伐採や抜根する時期にどのような整備をしていくのでしょうか?
沿道住民の方々のご意見を伺いながら、適切な時期に判断してまいります。

【要望】

落葉の前に剪定や伐採をしてほしいという苦情があるためその前に切らなければならないという現場の事情はわかりました。しかし街路樹は彩りや季節感、潤いや安らぎをもたらす効果や生理心理的なストレスが緩和、都心洪水を緩和、ヒートアイランド現象の緩和、火災時の熱吸収・低減による延焼防止、歩行者の分離、並木効果による運転者の視線誘導など様々な役割がありますが、現在は電信柱のように丸坊主になるほどばっさりと強剪定されており、街路樹の意義がなくなってしまっています。大和市の緑地率は残念ながら川崎市の8.87%に続き12.91%で県内で2番目に低い緑地率となっています。緑地率は農地と森林を足したものを市の面積で割ったもので神奈川県で統計を取っているものですが、残念ながらワースト2位という結果になっています。大和市の緑の基本計画では公園等ばかりなく街路樹も含む道路も公共施設緑地として位置付けられています。街路樹は緑をつなげるためにも重要です。町田市のように剪定は必要最小限に留め、樹冠が大きくなるような剪定の仕方を考慮していただきたいと思います。また植え替えが生じた際にはどのような木が好ましいのか木の特性を考え、大和市の街路樹に緑が戻るよう計画を立てていただくことを強く要望致します。